【第1回】ランダム和訳演習講座

ランダム和訳演習講座

 

●みなさんこんにちは、まこちょです。

 

さて、今回から始まりました「ランダム和訳演習問題」ですが、体系的に学習する和訳演習とは違い、文字通りどの単元を問われるか分からないところにこの講座の面白みがあります。

 

また、当然情報量も多くなりますので、便宜【参考文献】として、各サイトの該当記事に飛び、要所の文法事項について復習できるようにしております。ぜひご利用いただければと思います。

 

●ランダム和訳演習講座の進め方

このランダム和訳演習講座ですが、限りなく「実践」の趣が強いです。したがってしっかりと予習・復習の手順を踏んで自分のモノにしてください。

①予習

まずは下記のPDFから予習用和訳テキストを印刷しましょう。そしてなるべく「きれいな」日本語になるように仕上げてみてください。

 

この講座は単なる「英文解釈」の講座とは違って、文字通り英語で書かれた文をいかに日本語で正確に相手に伝えられるかをテーマにしています。

 

したがって、出来上がった「日本語訳」はもちろん日本語訳【だけ】を読んで内容がしっかりと理解できなければなりません。そのためには何度も出来上がった和訳を書き直さなければならない時もあるでしょう。

 

しかもその内容はしっかりと英文の構造にしたがったものでなければなりません。いくら日本語として流暢でも、それがもとのオリジナルの英文から大きく外れたものであったら、それは「独りよがり」と捉えられてもしょうがないのです。

 

私はよく和訳講座で「和訳は総力戦」といった言葉をよく使います。

 

これは、単に英語構造に長けているだけではダメ、日本語の綺麗さだけではダメ、といった「和訳」をするにあたっての心構えを説いているつもりなんですね。

 

ぜひこの講座で「和訳は総力戦」といった言葉の意味を深く考えていただけたらと思います。和訳というのはれっきとした問題形式の1つです。よく英語学習に日本語はいらないといった主張をしていらっしゃる識者がいらっしゃいますが、それは英語と日本語を一つの言語として考えているいわば「暴論」でしょう。

 

英語で書かれていることを、日本語でしっかりと正確に表現する

 

この何気ない行為の中に、どれほどの英知・修練が必要なのかをこの講座の中でもう一度考えていただけたらと思います。

 

※参考文献を読むタイミングについて

この講座は「ランダム」で読み応えのある英文を和訳していきます。

 

もちろん英文を構成するパーツはそれぞれ英文法のルールに基づいて構成されているわけですから、当然ながら要求される英文法の知識は膨大になります。

 

もちろん読者の方の英語力はそれぞれですので、人によって不明な文法箇所というものが発生します。

 

そこで当講座では「参考記事」と称して、みなさんの理解が必要な箇所に、私のブログの該当記事へリンクで飛べるようにします。

 

課題英文はこのような知識を使って和訳をしているということをしっかりとみなさんに提示することによって決して曖昧ではないゆるぎない和訳力をつけるという目標があります。

 

ただですね、この参考記事ですが解説中に差し込んでありますので、途中で参考記事にリンクしてしまうと本講座のテーマからそれてしまい、一体何を学習しているのか見失ってしまう可能性があります。

 

したがって参考記事は各テーマを学習した【あと】で見るようにしましょう。

 

テキストはこちらから

↓↓↓

第1回ランダム和訳テキスト

 

では、スタートです。本日の和訳問題ですが一見簡単に見えますが…(笑)

ランダム和訳課題①

【問1】Although hardly limited to the twentieth century, the questioning of past values ​​can certainly be said to be one of the most definite characteristics of the past one hundred years.        [津田塾大]

【単語】
question「~に疑問を抱く」
values 「価値観」
characteristics「特徴」

 

【解説】

攻略①Althoughは「接続詞」

Although hardly limited to the twentieth century,…

Althoughからスタートするこの英文、非常に特徴のある形をしていますがこのような箇所を「ただ何となく」解釈しているようではとても正確な和訳はできません。

 

Althoughは「接続詞」。したがって後ろには主語(S)+動詞(V)が続くのが基本です。つまり

 

Although S+V
「SがVだけれども」

 

となっていなければならないのですが、この英文は後ろにhardly limitedと続くばかりで主語(S)がありません。

 

実は従位(属)接続詞の後ろの主語(S)と動詞(V)は、ある条件が整えば「省略」することが可能です。以下のルールを覚えておきましょう。

【接続詞の後ろの主語(S)と動詞(V)が省略されるとき】
①主節の主語(S)と同じ
②動詞がbe動詞
⇒ この2つの条件がそろったとき「省略」できる

したがってここでは、

 

Although (it is) hardly limited to the twentieth century,

the questioning(S)can be(V) said…

 

と主節の主語the questioning(of past values)とbe動詞(ここではis)が省略されているのです。

 

この点がしっかりわかっていると、limitedが(V)ではなく過去分詞に見えてくる、つまりis limitedで受動態=「制限【される】」であるとわかることが大きいですよね。

 

hardlyはnotの仲間「ほとんど~ない」と訳します。このように一見否定の副詞に見えないものこそ解釈に注意しましょう。

 

【途中訳】
Although (it is) hardly limited to the twentieth century,
(それは)ほとんど20世紀に限られたことではないのだが」

 

まこちょ
まこちょ

※まこちょのちょっとハイレベルなお話①

althoughには「副詞」はない

thoughとalthoughは似て非なるもの。しっかりとそれぞれの性格を押さえなければなりません。

 

●although 
接続詞 ⇒ although S+Vで「SがVだけれども」

●though
接続詞 ⇒ though S+Vで「SがVだけれども」
副詞 ⇒ 英文中のどこにでも置ける

 

そう、thoughには「副詞」の用法があるのがalthoughとちょっと違うところです。「副詞」ですから文中や文末に置くことが出来るんですね。


The work was hard. I enjoyed it, though.
「その仕事は大変だった。でも私は楽しんだけどね」

 

この副詞のthoughは盲点になりますので注意してくださいね!

【参考記事】
接続詞の後ろの文の省略ルールについて

接続詞と接続副詞の違いとは?

 

攻略②the questioning of past valuesの訳し方

the questioning of past values ​​can certainly be said…

canは助動詞。したがって当然the questioning of past valuesの箇所は主語(主部)になりますが、だからと言って「過去の価値観の疑問」としてもしっくりしません。

 

ここはA of Bの形になっていることもありますし、もう少しナチュラルに訳出することを目指してみましょう。

 

A of Bの形になった場合、AとBのうち「動詞」で表現できる方を探してみましょう。するとここではthe questioningを「疑問」⇒「疑問視する(疑問に思う)」と訳せることに気づくはずです。

 

したがってここではofを「目的格(~を・に)」と訳して

 

the questioning of past values
「過去の価値観の疑問」

「過去の価値観疑問視する(こと)」

 

とすると誰でも理解しやすい和訳ができます。だって和訳ですから、誰が読むかわかりませんからね。

 

ちなみにこのように名詞主体で構成されている英語を動詞主体の日本語に書き換えるテクニックを「名詞構文」といいます。

 

【参考記事】

名詞構文の種類はどんなものがあるのか?
A of Bの訳し方は4パターン!について

 

攻略③certainlyの訳し方

the questioning of past values ​​can certainly be said…

この箇所はもう一つ、和訳上ミスの多いポイントが含まれています。それはcertainlyという副詞。

 

certainlyは通称「文修飾の副詞」といい、その名の通り文全体を修飾するのです。

 

文修飾の副詞はそのほかにUnfortunately「残念なことに」やHappily「幸いにも」などがありますが基本は文頭に置かれます。ですが今回のようにcertainlyは文中に入ることも多いので注意が必要です。

 

この文修飾の副詞はIt is 形容詞 thatの形に書き換えられます。

 


Fortunately
, human beings are not thoughtless. 

It is fortunate that human beings are not thoughtless.
「幸いなことに、人間はそんなに無分別ではない」

 

したがって今回の英文はcertainlyを文頭に出して

 

the questioning of past values ​​can certainly be said…

It is certain that the questioning of past values ​​can be said…
「過去の価値観を疑問視することは、疑いなく…と言える」
「過去の価値観を疑問視することは、…と言えるのは間違いない

と解釈すると良いでしょう。

 

攻略④be said to doの訳し方

…the questioning of past values ​​can certainly be said to be

be said to Vは「Vであると言われる・言われている」という意味です。もともとはThey(People)say that…を受動態にしたものであることを覚えておきましょう。

 


They say that he is a teacher.
「彼は先生であると言われている」

=It is said that he is a teacher.
=He is said to be a teacher.

 

なお、この表現はbe said to have 過去分詞の形になったときは【~だった】と言われている」という意味になることは和訳上しっかり覚えておくことが大切です。

【参考記事】
to Vとto have 過去分詞の違いとは?完了不定詞について

 

one of the 最上級+複数名詞「最も~であるうちの1つ」と解釈します。

 

【構文図】

(Although (it is) hardly limited to the twentieth century),

the questioning(S) (of past values) ​​can certainly be said to be(V) one of the most

definite characteristics(C) (of the past one hundred years).  

 

【和訳例】
ほとんど20世紀に限られたことではないのだが、過去の価値観を疑問視することは、疑いなくこの100年間の最も明確な特徴の1つであると言える。

 

さあ、どうだったでしょうか。この第1文を和訳しただけでも、正確な訳出をするにはしっかりとした文法事項の習得が必要不可欠であることがご理解できるかと思います。頑張っていきましょう!

ランダム和訳課題②

【問2】As many developed countries become the destination for immigrants-people coming from other lands in search of better opportunities-the ethnic mix is ​​changing and with this has come the fear of the loss of national identity as represented in a shared national language and common values. [東京大学]

[単語・表現]
developed countries「先進国」
immigrant「(入国)移民」
in search of ~「~を求めて」
ethnic mix「諸民族の混合」

 

みなさんは東京大学と聞くとやたらと「構えてしまう」傾向があるのですが、この大学ほど平易な単語を使っている割には、和訳しようとすると全く形にならない大学はありません。

 

和訳問題を通じてこの大学がいったい我々に何を伝えようとしているのか、ぜひ堪能していただけたら幸いです。

 

【解説】

攻略①Asの範囲を特定する

As many developed countries(S) become(V) the destination(C)
asには「前置詞」と「接続詞」がありますが、今回は後ろにS+Vと文が続いているので「接続詞」と判断していきましょう。前置詞の場合は後ろに名詞が続きますが、その場合は「目的格」の名詞が来ると決められています。
接続詞のasは意味が多岐に渡ります。後ろの文の形である程度意味を絞ることは出来ますが、そうでなかったら前後の文脈で判断していくことになります。
As many developed countries(S) become(V) the destination(C)
多くの先進諸国が…の目的地となる(    )」
【参考記事】

攻略②ハイフン「ー」の役割を見切る

… for immigrants-people coming from other lands… 
immigrantsは「移民」という意味ですが、移民といっても様々な種類があります。したがってここでは「ハイフン(ー)」を使って、具体的にどのような移民なのかを説明しようとしています。
この時のポイントとして、ハイフン以下はimmigrantsの「同格」なのですから当然「数」もしっかりと合わせなければなりません。
immigrant【s】と複数形になっている以上、説明を受けた名詞も複数形peopleになっているのは当然ですね。
for immigrantspeople coming from other lands… 
for immigrants = people (coming from other lands… )
「移民、つまり…他の土地からやって来る人々」
まこちょ
まこちょ

※まこちょのちょっとハイレベルなお話②

名詞+~ingの訳し方には要注意
英文中によく登場する名詞+~ingですが、この箇所の訳し方には注意が必要です。まずは以下の記事を確認していただけたら幸いです。
この記事を読んでいただくとおわかりになると思うのですが、名詞+~ingの形には解釈上、
●~ingが現在分詞 
⇒ 前の名詞を修飾する「~している名詞」
The woman wearing a black hat is my sister, Jane.
「黒い帽子をかぶっている女性は私の妹、ジェーンです」
●~ingが動名詞 
⇒ 名詞は動名詞の意味上の主語「名詞が~すること」
I’m proud of my brother studying at Oxford University.
「私は、弟がオックスフォード大学で学んでいることを誇りに思います」
と形こそ~ingですが、和訳方法が大きく異なる2つの文法事項があることはよく覚えておきましょう。
【参考記事】

攻略③comeの動詞の使い方

and with this has come the fear of the loss of national identity…
さて、この箇所ですがうまく和訳できたでしょうか?
まずand以下の英文ですが、hasの前のthisを主語(S)とすることは出来ません。前置詞のついた名詞は文の主語(S)になることは出来ないという英文解釈上きわめて重要なルールがあるからですね。
【参考記事】
この箇所は等位接続詞のandによって2つの文が繋がっているのは誰が見ても分かります。A and BのAとBの主語が「同じ」場合、Bの文の主語は「省略」されて書かれる場合があるからといって
the ethnic mix(S) is ​​changing(V)
and
(with this) (the ethnic mix(S)) has come(V) the fear of the loss…
と捉えてしまった方も多かったのではないでしょうか?つまりhas comeの主語(S)をthe ethnic mixとしてしまったケースです。
【参考記事】
非常にありえる形だけに油断してしまいますが、has comeのcomeが主に「自動詞」で使われることが分かっていると、comeの後ろにthe fear…が続いているこの形が不自然に見えてくるから不思議です。
the ethnic mix(S) is ​​changing(V)
and
(with this) has come(V) the fear(S) of the loss…
そう、この箇所はwith以下が「倒置」しており、the fear(S)がhas come(V)の後ろにいっています。
この部分が「倒置」と気づくためのポイントはいくつかありますが、一番の決定打は先ほどもいった「comeが自動詞で後ろに目的語(O)を直接置くことが出来ない」という点です。
【参考記事】
その他の「倒置」であると気づくためのポイントとして

①with thisは「このこととともに」という意味だが、thisは代名詞で前の文the ethnic mix is ​​changing「諸民族の混合のありさまは変化しつつある」を指している。つまりこのthisは「旧情報」であり、旧情報 ⇒ 新情報の文脈の流れに持っていくために倒置しているという点。

②主語のthe fearは「新情報」となるために当然情報量が絶対的に少ない。したがって情報量の不足を補うために、この英文のように主語に修飾語句をたくさん掛けることになる。その結果主語(主部)の箇所が長くなってしまうので倒置をして読みにくさを防いでいるという点。

と、この辺あたりが倒置を見切るヒントになっていますが、「comeの後ろに直接名詞が置けない」というポイントが極めて分かりやすいことがおわかりいただけるかと思います。
the ethnic mix(S) is ​​changing(V)
and
(with this) has come(V) the fear(S) of the loss…
諸民族の混合のありさまは変化しつつあり、またこのこととともに、…が喪失するという恐怖が生じた」
【参考記事】

攻略④様態asについて

…national identity as represented in a shared national language and common values.
先ほど【攻略①】で接続詞のasについて触れましたが、その中でもasの後ろが「不完全な文」になっている場合は「様態」のasといい、前の名詞を修飾することになります。したがってここは
…national identity ← [as represented in a shared national language and common values]
皆が共有する国語や共通の価値観として表される国家のアイデンティティー…」
と和訳するとバッチリです!
【参考記事】
【和訳例】
多くの先進諸国が、移民、つまり他の土地からもっとよい機会を求めてやって来る人々の目的地となるにつれて、諸民族の混合のありさまは変化しつつあり、また、このこととともに、皆が共有する国語や共通の価値観として表される国家のアイデンティティーが喪失するという恐怖が生じた。